トゥバについて

シベリアの森とモンゴルの草原が出会う場所。トゥバ共和国(The Republic of Tyva)はロシア連邦に属しモンゴル国の北西隣り、いわゆる南シベリア、もしくはアジア中央部と呼ばれる 地域に位置する。モンゴルとは異なる民族グループであるが関係は深く、ちょうど韓国と日本の関係によく似ている。面積はほぼ日本の半分の大きさで、人口約30万人。首都はクズル市。

先住のトゥバ人が住民の70%を占め、使用言語はトルコ語と同じくテュルク語系のトゥバ語であり、公用語としてロシア語を用いる。基本的に黄色人種だが、日本人と比較して一般に肌が白く、 中には金髪で緑や青い目を持つ人もかなりの頻度で見られる。人口の70から80%以上は町に定住しているが、様々な形態の遊牧・狩猟生活も広く行われている。

宗教はラマ教だが、古くからあるシャマニズムの方がよりいっそう生活に定着しており、その併存形態は日本における仏教と神道の共存と大変共通している。

アルタイ山脈周辺型の「喉歌」について

喉歌(のどうた)の特徴として、喉を詰めた発声から生じる、笛のような高い声音でメロディーをつけて歌うことなどがあげられる。ここでは便宜上、歌詞を伴わない楽器のような声と して喉歌を定義する。喉歌を持つほとんどの民族が、浪曲のようなだみ声(喉詰め発声)で英雄叙事詩を歌うとき、装飾として喉歌を用いることから、叙事詩と喉歌の強い関連性が示唆される。

このことからアルタイ山脈の西側のテュルク語系の民族(テュルクメニスタンを中心に、カラカルパクなど)で広く認められる、男性によるだみ声の英雄叙事詩語りとの関連性は注目してよい。 このような喉歌は、アルタイ山脈周辺の民族に見られる芸能で、トゥバではフーメイ(khoomei)と呼ばれている。

他にもモンゴル国西部のフーミー(khoomii)や、アルタイ共和国のクーメイ(koomei)などは、この語がモンゴル語で咽頭を意味するフーミーから広まったことをよく示している。

またハカス共和国のハイ(khai)、アルタイ共和国とケメロヴォ州のカイ(kai)、モンゴル国西部のハイラフ(khailakh)などのように、叙事詩を表す名称がそのまま喉歌の名称として使われる 場合があり、このことも英雄叙事詩と喉歌の関連性の強さを示している。

もともと男性の芸能であったが、この10年以内にトゥバでもモンゴルでも女性の喉歌歌手があらわれだしたのは、大きな伝統の変化として注目される。

トゥバの喉歌

トゥバの喉歌の分類は人によって異なるが、大きく3から5種類に分けている。

フーメイ(khoomei)
トゥバの喉歌の基本になる発声法。高い音のでる喉歌。喉詰め発声をしたまま舌をどこにも付けずに口唇を丸くし、口腔内の大きさを変えることで音程を変える。

スグット(sygyt)
口笛を語源とする、高い音のでる喉歌。喉詰め発声をしたまま舌を水平に歯ぐきの上のあたりに付け、左右非対称の平唇にして発声。ひじょうに鋭い笛のような音がでる。

カルグラー(kargyraa)
低音の喉歌。喉詰め発声とは異なり、仮声帯の振動がこの声の音質を決定していると考えられる。「ガラガラ」した声音。5種類の喉歌とは、 これにボルバンナドゥルborbangnadyr(喉歌をトリルのように揺らすスタイル)、エゼンギレールezenggileer(喉歌をギャロップのように揺らす スタイル)を加えている。

等々力 政彦 Todoriki Masahiko

トゥバ民族音楽演奏家。20年近くにわたり南シベリアで喉歌(フーメイ)などのトゥバ民族の伝統音楽を現地調査しながら、演奏活動をおこなっている。あがた森魚、朝崎郁恵、中孝介、安東ウメ子、 EPO、太田惠資、OKI、押尾コータロー、古謝美佐子、鼓童、大工哲弘、常味裕司、一十三十一、吉見征樹、Huun-Huur-Tu、Sun Ra Archestraなど内外のミュージシャンと共演、およびアルバム参加。 嵯峨治彦(モンゴル民族音楽)とのユニット「タルバガン」、ササマユウコ・真砂秀朗とのユニット「生きものの音」で活動中。
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受賞
第3回ユネスコ主催国際フーメイ会議(ロシア連邦トゥバ共和国クズル市):ゲスト部門優勝、総合第2位(外国人で初)。(タルバガン;1998年7月)
第4回ゲナディ・トゥマット記念・ハンダガイトゥ・フェスティバル(ロシア連邦トゥバ共和国ハンダガイトゥ市):ゲスト部門優勝、総合第3位(外国人で初)。(等々力政彦;2004年7月)

等々力 政彦 Todoroki Masahiko