top of page

北欧の夏至は、太陽が沈まぬ“白夜”の季節に訪れます。昼と夜の境が曖昧になるこの時期、自然界はまさに生命の絶頂を迎えます。動物も植物も旺盛に息づき、人間もまたそのエネルギーを全身で受け取ります。頭に花冠をのせる風習には、草花の命の力を自らに宿すという意味が込められており、自然との一体感を象徴します。そして中央に立てられるメイポールは、古来より男性の象徴とされ、豊穣や再生を願う儀式の中心です。これらの風習は、キリスト教伝来以前のアニミズムや自然崇拝に根ざした文化であり、文化人類学的にも大変貴重な伝統です。夏至祭は、白夜の光の下で自然と命の営みに感謝を捧げる、北欧ならではの美しい祝祭なのです。

北極圏 午前2時頃、太陽は沈まない
「北欧・スウェーデンの夏至祭」
兵庫県立芸術文化センター
❖日にち : 2025年6月20日(金)
❖時 間 : Open 18:15 / Start 19:00
❖会 場 : 兵庫県立芸術文化センター 中ホール
兵庫県西宮市高松町2‐22 ▶ アクセス
❖料 金 : 全席指定
一般 5,000円 / 中学生以下 2,000円
※5歳以上入場できます。
❖詳細予約 :発売中 ▶ こちら
❖お問合せ :兵庫県立芸術文化センター
TEL. 0798-68-0255


「太陽が沈まない夜、心がひらく」
― 北欧の夏至祭と、家族が集うサマーハウスの物語。
寒くて暗い冬から解放された夏は、北欧の人たちにとって明るい太陽は宝物です。そして、ほとんどの家族がサマーハウスを持っています。私の留学時代からの親友も、自分が育った古い家を少しずつ改装して、夏の間は娘や孫たちもスケジュールを組んでサマーハウスとして使っています。場所はヴェルムランド地方で、この地域の民謡「ヴェルムランド」は日本の人たちにも愛されています。
1960年代初めにストックホルムに住んでいたころ、海外渡航が自由化されていなかったため日本人も少なく、大学の研究室から派遣された単身赴任の教授たちくらいでしたので、私たち夫婦のアパートによく集まっていました。その時に流していた音楽が「ヴェルムランド」でした。その哀愁に満ちたメロディーは、なぜか心に響いて、皆さん涙を浮かべて聴き入っていたのを思い出します。冬の間の週末は、誰かの家に集まってワインを片手に長い夜を過ごすのです。
それが夏至祭の頃になると、人々の気持ちも一変し、外での生活が主になります。親友のサマーハウスに夏至祭の日に招かれて過ごした時、都会から帰郷した人たちは、広場のメイポールの周りにスウェーデンの民族楽器ニッケルハルパの音色に導かれるように大勢の人が集まってきて、フォークダンスが始まります。ダンスをしたり、ゲームをしたり、大人も子どもも思いっきり楽しみます。夜は明るく、それぞれが料理やデザートを持ち寄って、公民館のような場所でテーブルセッティングをして、久しぶりに故郷に帰ってきた人たちとの会話も弾み、強いお酒のスナップスと共に夜が明けていくのです。
夏のサマーハウスはお手洗いも外の小屋で、都会での生活とはまるで違ったプリミティブな自然の中での暮らしは、幼い子どもたちにとって、近代化された日常生活の中で大切なことを学ぶ有意な体験だと思います。

川上 玲子 Reiko Kawakami
前川國男建築設計事務所勤務後スウェーデン国立美術工芸デザイン大学に留学。帰国後公共建築のテキスタイルアートやインテリアデザインを行う。公益社団法人 インテリアデザイナー協会理事長、武蔵野美術大学客員教授を歴任。現在北欧建築・デザイン協会 会長。
「関西が、北欧音楽ブーム発祥の地?!」
北欧デザインやインテリア、ファブリックは全国的な人気を集めていますが、実は北欧の音楽文化にいち早く火がついたのは関西でした。来日アーティストの多くがまず関西で公演を行い、現地の音楽ファンの間で熱い支持を獲得。さらに、北欧の音楽に影響を受けたアーティストやグループも関西を中心に次々と誕生しています。関西は、日本における“北欧音楽ブーム”の発信地なのです。
その火付け役となったのが、ダーラナ地方ボーレンゲ(Borlänge)在住、
Eva Bergfors(エヴァ・ベリフォシュ)さん。以前、日本に長く住んで
いたことがあり、古くから知る人は、親しみをこめて「エヴァさん」と
呼んでいます。
<日本ニッケルハルパ協会のブログ>
スウェーデンの伝統音楽と日本をつなぐEvaさん
インタビュー前編 ▶ こちら
インタビュー後編 ▶ こちら

<関西を拠点に活躍する音楽家>

ドレクスキップ

シャナヒー&アンニコル

コルミッコ
「ヴェスタノー劇場
ー スウェーデンが誇る“伝統の舞台”」

大森ヒデノリ

本田 倫子

樫原 聡子

初めてスウェーデンに行ってから30年余り、回転ダンスと揺らぎのある音楽に魅せられスウェーデンに通っています。最初はスウェーデン人の友人とひっそりと楽しんでいたのが、2000年に人気グループSWÅP(スォップ)が初来日し、ワークショップが開催されたころからぼつぼつと愛好者が増え始めました。その後、私はほぼ毎年、ダンスの大会に出たり、ワークショップに参加する傍ら、各地のステンマを回り、夏至祭に参加するなどスウェーデンの文化に触れてきました。かっこいいイメージのあるスウェーデンの人ですが、田舎の人は素朴でちょっとシャイ、おばさんたちはおしゃべり好きで日本人に似ています。短パンでひげ面のおじさんが有名なフィドラーだったなんてことも。夏至祭では大人も子供もカエルダンスに興じています。今年の夏、Västanå Band (ヴェスタノーバンド) がスウェーデンから来日すると聞き、私はコロナ禍前の2018年と2019年に見に行ったヴェスタノー劇場のことを思い出しました。毎年のように訪ねている南ダーラナの友人のサマーハウスから西に200km。ノルウェーに近いヴェルムランド地方のSunne(スンネ)のヴェスタノー劇場は毎年、この地方出身のSelma Lagerlöf(セルマ・ラーゲルローフ) [※日本ではニルスの冒険で有名]の作品を、伝統音楽を基にした音楽とダンスでフォークオペラに仕立てて上演しています。音楽もダンスも素晴らしく、言葉はわからなくても目が離せません。かなり遠方からの観客も多く2幕仕立てで希望すれば幕間に食事をすることもできます。ロビーには今までの作品の衣装が展示されています。ここで夏の一日を楽しむのです。スウェーデンの片田舎の村でチケットがいつも売り切れになるほど人気のあるヴェスタノーバンド、日本で聞けることをすごく楽しみにしています。

田中 弘美 Hiromi Tanaka
元々はインターナショナルフォークダンスの愛好者で、90年代からスウェーデンダンス、音楽にはまり、スウェーデンのダンスワークショップや音楽祭に多数参加している。この間、2回ハンボ大会に出場し、ポルスカのメダルテストではビッグシルバーメダル獲得。ヴァイオリンやニッケルハルパも楽しんでいる。スウェーデンダンスの会ブローイエテン主宰。現在は(公社)日本フォークダンス連盟理事。スウェーデンからのダンス指導者の招聘にかかわる。



「モノに、物語がある。スウェーデンの蚤の市へ」
スウェーデンの「ロッピス(Loppis)」とは、日本で言う蚤の市やリサイクルショップのようなもので、使わなくなった物を売買する場です。ストックホルムのヒョートリエットで開催されるロッピスが特に有名で多くの観光客が訪れますが、地元の人々に親しまれているのは、駐車場に停めた車のトランクに商品を並べるようなラフなスタイル。そして、どの街にもあるのが、赤十字や救世軍といった慈善団体が運営する屋内のロッピス。ほとんどの商品は住民からの寄付で成り立ち、売り上げは福祉活動に使われます。20年ほど前は、こういったロッピスでも名窯の器や人気作家の作品が驚くほど安く見つかりました。ところが今はネットで価値を調べ、誰でも販売できる時代。掘り出し物が見つかる機会は年々減っています。それでも足を運んでしまうのは、スウェーデンの暮らしを垣間見られる面白さがあるから。古着、古本、食器、家具、家電など市販品だけでなく、丁寧な刺繍作品や色彩感覚が光る手編みのブランケットには感心することもしばしば。商品としての価値はなくても、心惹かれる物に出会うと「撮影小物」や「資料」と言い訳して買ってしまいます。
有名なロッピスでリーズナブルに名作を手に入れるチャンスを狙うのもよいですが、もし時間があれば慈善ロッピスにも足を運び、自分だけの逸品を探してみては?なお毎日開店ではないのでサイトであらかじめ営業日を調べるのをお忘れなく。
三田 陽子 Yoko Mita
北欧ビンテージショップ「Fukuya(フクヤ)」店主。
2006年に、女性をターゲットにした北欧ビンテージ食器店「Fukuya」を開店。北欧のモノに魅了されるうちに、ライフスタイルや文化も含めたコトを紹介したいという思いが生まれる。2021年にはその思いを形にし、レシピサイト『北欧のおやつとごはん』を開設。雑誌やメディアで北欧レシピの提供や料理制作も手掛ける。著書に『北欧食べるつくるかわいいと暮らす』『北欧のおやつとごはん今日すぐ作れる北欧料理111レシピ』がある。


「ホイワエで開催される 芸文ロッピス」


協力:関西・日本スウェーデン友の会








bottom of page